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じぇいびぃぽったァ

先日,JSCVAの理事長より震災被害に関するメールを頂いて思い出したが,僕は元JBポッター(日本周術期経食道エコー認定医)である。ちなみに,僕が合格した2005年は,人に言わせると「最も緩かった年」らしい。自分なりに結構勉強したので,そう言われ若干がっかりしたものだ。それはそうと,講習会に参加し単位を取得してお金を納めたらJBポッターを更新できたのだがしなかった。帰国したら,後輩達と一緒に勉強し直してまた受験するつもりだ。ところで,JBPOTの意義について私見を述べる。JBPOTが登場する数年前に研修医として,医局関連病院で最も心臓手術の多い病院Aに勤務した。当時はTEEの資格試験が出来るなんてゆめ思わず,一(いち)スキルとして教科書を読み技師さんや外科医に教わりながら学んだ。特に弁の手術時に登場する技師Nさんは,術前に関してもawakeでTEEを行っているようなエキスパートで,外科医が完全に信頼していた。その後,別の施設で働く間にJBポッターとなり,8年目に再びA病院に戻った。器機(HP)が以前のままだったこともあり,研修医の頃よりも遥かに色んなことが読み取れるようになったなあと実感できた。一方で,術者から麻酔科医が要求される情報に関しては,以前とあまり変わらなかった。そして,弁手術になると以前のようにNさんが登場する。NさんのようにTEEに関して信頼されるようになれば,JBPOTを取得した意義をさらに感じたのだろうが,そうはいかなかった。20年以上,TEEだけでなくTTEのプロとして貢献してきたNさんと外科医の間の信頼関係の中に,JBPOTなどという基本的に麻酔科医しか知らないような資格を以て入り込もう等,おこがましいにも程があるのは冷静に考えればわかる。正直に言えば,実際の現場でJPBOTを取得したから上手くいったと思える症例経験は無いような気がする。もちろんTEEが有用だった経験はいくつもあるが,例えJBポッターになっていなくてもそれはできたと思うからだ。というわけで,JBポッターであることの意義を臨床で感じたことはっきり言ってない。なのに,なぜ帰国したらまた受験しようと思うのか。ここからやっと本題だが,JBポッターになるためには勉強が必須である(というか実地経験があまりなくても勉強すれば合格できる気がする)。また,JBポッターになるとJBポッターになりたい人から色々と質問を受けるため,ええかっこしたい自分のような人間は,また勉強するはめになる。そういった一連の勉強を繰り返しエコーを触っているうちに,TEEだけでなくTTEもある程度読めるようになり,人に教えるつもりが自分が学んでいることに気付く。知識が広がると例えばエキスパートのNさんや外科医,循環器内科医と突っ込んだ話しができるようになる。研修医の頃は細かすぎて理解不能だった各種講習会,学会でのオタクな専門的な話しを(少し)理解できるようになる。このようにJBポッターであること自体が,知識のアップデートを強制的に科すような面があるので,基本的にlazyな僕には有り難いのだ。同じような資格としてACLS instructorがある。ACLSはインストラクターの資格をまだ保持しているので(ICLSは失ったが),帰国したらまた活動するつもりだが,ACLSインストラクターをやっていたからこそ,急外で蘇生に成功したといえる症例はあるのかと問われるとわからない。インストラクターでなく一プロバイダーであったとしても,同じように動いたかもしれないから。ACLSの知識は麻酔科医を問わず医師にとっては必須だと思うが,手術室でACLSが必要となることはほとんどないだろう。その一方で,インストをやっていると循環器内科医や救急専門医など僕のような一般麻酔科医より遥かに多くのACLSを現場で経験されている方が受講者になることがしばしばある。そういったプロを相手にインストするためには,つねに情報を詳細にアップデートし,知識はもちろんのこと,指導技法についても実践と反省を繰り返し,智に立ちすぎて角が立たないようにスキルアップする必要がある。
まとめると,JBPOTやACLS instructor等の資格取得自体に然したる意味は無いが,知識とスキルのアップデートのトリガーとしての意義は十分にあるというのが私見である(あまり新鮮味の無い結論になった)。あと,友達が増える。一方,失うものとして時間とお金(「時間とお金は自分に投資しなさい」という前教授のお言葉を思い出すなあ)。ちなみに,自分が持っている資格の中で最も意義を感じない資格。学位(医学博士。正しくは「博士」(医学)だそうです)。田舎の両親だけは喜んでくれたが。学位について思うことはまたいつか。

by goritousan | 2011-03-31 08:32 | 麻酔